MePTで見える6指標

1.HAM impulse

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「HAM(Hip Adduction Moment)」は歩行中の股関節への負担の指標(特に内転方向)を指し、「HAM impulse」は立脚期のHAMの積分値を現します。
HAM impulseと歩数の積である「股関節累積負荷」は、変形性股関節症(以下、股関節OA)の進行に関与すると報告されており、HAM impulseは股関節OAの変形進行の1指標として利用できます。
これは歩容を変えることで股関節OAの変形進行を抑制できる可能性を示しており、理学療法士が変容できる要因として、介入目標の1指標となり得ると考えられます。

2. 股関節 内転/外転

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股関節の内転/外転運動はHAMの値に直結する指標となり得ます。特に、立脚期に遊脚側への骨盤の下制を生じるTrendelenburg(トレンデレンブルグ)歩行は、立脚側の股関節内転につながり、内転角度の増大としても表現され得ます。
一方、股関節OA患者の中には内転制限を生じる症例も存在します。その場合、歩行中の内転運動が減少するケースもあるため、股関節の内転/外転角度を観察することは可動域制限の有無の推測につながります。

3. 股関節 屈曲/伸展

股関節屈曲/伸展運動は股関節OAの重症度や進行速度と関連します。先行研究によると股関節屈曲/伸展運動の制限は、股関節OAの進行の予測因子となっています。
また、臨床上でも股関節OAの重症度が高いほど、伸展制限および屈曲制限を有する症例が多いことがよく経験されます。歩行における初期接地時の股関節屈曲角度が大きいことも、変形進行のリスク因子である可能性があると考えられえます。

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4. 膝関節 屈曲/伸展

膝関節では、股関節運動および脚長差の影響を強く受けます。股関節OAの進行に伴い、患側の脚長が短縮することも多く、脚長の代償によって膝屈曲運動も減少します。
一方で、立脚終期の股関節伸展運動が減少すれば、それに伴い膝関節の伸展も減少します。

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5. 体幹 側方傾斜

体幹の側屈は上半身重心の移動につながり、ひいてはHAMに大きく影響します。
特に、立脚側への体幹の側屈が生じるDuchenne(デュシェンヌ)歩行では、身体重心を前額面において股関節中心の上に位置させることにつながります。身体重心と足圧中心を結ぶように生じる床反力の作用線が、より股関節中心に近づくことで、股関節周りのモーメントを減少させます。
股関節周りのモーメントの減少は、HAMの減少を意味するため、ひいては股関節累積負荷の軽減につながります。ただし、Trendelenburg歩行も同時に生じている場合はこの限りではありません。

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6. 骨盤 側方傾斜

骨盤の側方傾斜は、股関節内転/外転運動とも深く関連します。股関節OAは変形進行に伴い、骨頭の上方移動が生じる例で進行が早いことが知られています。
従って、歩行の立脚期に骨盤が遊脚側へ下制する方向に傾斜することは、立脚側の大腿骨頭の外上方の被覆を減少させ、骨頭の外上方移動に対する抑制の減少と深く関連します。さらに、立脚中期で遊脚側への骨盤下制が生じるTrendelenburg歩行が起きている場合には、重心が遊脚側へ偏位しやすく、結果的に股関節周りのモーメント(HAM)を増大させることになり、股関節OAの進行に関連すると考えられます。

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